
「小柄なセンターバックは通用しない」というこれまでの常識を覆し続けるリサンドロ。度重なる怪我という試練を乗り越えた今、彼はさらなる高みに到達したのでしょうか。その能力を徹底的に解剖します。
| 選手名 | リサンドロ・マルティネス |
| 生年月日 | 1998年1月18日 |
| 所属クラブ | マンチェスター・ユナイテッド |
| 出身地 | アルゼンチン・グアレグアイ |
| 身長 / 体重 | 175cm / 72kg |
| 主なポジション | CB(センターバック) |
| 利き足 | 左足 |
| 逆足の精度 | 3 / 5(※EA SPORTS FCシリーズ参考) |
| 背番号 | クラブ:6 / 代表:25 |
- 1.強靭さ:FWとの競り合いで圧倒する、強固なフィジカル
- 2.空中戦:圧倒的な跳躍力で、空からの脅威をシャットアウトする力
- 3.守備技術:決定的なピンチを未然に防ぐクリーンな奪取技術
- 4.対人能力:敵のアタッカーを自由にさせない密着マークの質
- 5.危機察知:守備組織の綻びを埋め、決定的な穴を作らない位置取り
- 6.冷静さ:強いプレスを受けても慌てず、確実な選択ができる力
- 7.集中力:試合中の不意なミスを防ぎ、安定した対応を続ける力
- 8.機動力:裏への抜け出しや、広大なスペースをカバーする速さ
- 9.配球力:最後方から攻撃の起点となるビルドアップパスの質
プレースタイル徹底解説

小柄な体格を補って余りある予測能力と、最後方から攻撃を組み立てる左足の精度を兼ね備えたモダンなセンターバックです。
・武器:密集地を通す縦へのパスと、相手に前を向かせないアグレッシブな対人守備。
・弱点:屈強なFWとの物理的な競り合いにおける空中戦と、度重なる負傷によるコンディションの維持が課題となります。
最後方から攻撃を司る正確な配球技術
センターバックという枠に収まらず、中盤の底から攻撃を構築するビルドアップの起点として機能しています。左足から繰り出されるパスの精度は極めて高く、密集地を通す縦へのパスや、局面を一気に変える対角線へのロングフィードを自在に操ります。スタッツにおいてもパス成功率は88.7%を記録しており、プレッシャーのかかる条件下でも正確なファーストタッチでボールを落ち着かせる能力に長けています。この技術的汎用性により、守備陣形を崩すための最初のスイッチを入れる役割を担っています。
予測と勇猛さで体格差を覆す対人守備
「ザ・ブッチャー(肉屋)」の愛称が示す通り、極めてアグレッシブな対人能力が最大の特徴です。身長175cmと小柄ながら、相手アタッカーに前を向かせない執拗な密着マークを繰り返します。これは単なるフィジカルの強さではなく、ボールが渡る瞬間に寄せる予測能力の鋭さによるものです。身体を巧みに差し込み、重心の低さを活かしてボールを奪い取る技術はリーグでも指折りです。一度食いつくと離れないその粘り強さが、相手攻撃陣にとって大きな心理的圧迫となっています。
長期離脱を乗り越えた精神的強靭さと主将の自覚
度重なる膝や足の負傷、特に2025年の膝損傷という絶望的な状況を乗り越えた精神的なタフさが高く評価されています。リハビリ期間中に一度は引退を考えるほどの苦悩を経験しながらも、2025年11月に復帰。現在はキャプテンマークを巻く場面も多く、最後方からチームを鼓舞する統率力を発揮しています。ピッチ上で見せる勇敢なプレーは、周囲の若手選手にとっての基準となっており、彼の存在そのものがチーム全体の守備強度を底上げする要因となっています。
体格的制約による空中戦の構造的な脆さと負傷リスク
技術と闘志で補完しているものの、175cmという身長に起因する空中戦の脆さは構造的な課題として残っています。落下予測が正確なため、今シーズンの空中戦勝率自体は高い水準にありますが、屈強なターゲットマンとの直接的な競り合いでは劣勢を強いられる場面が見受けられます。また、そのアグレッシブすぎるスタイルゆえに身体への負荷が大きく、近年の負傷の多さも懸念材料です。持続的なパフォーマンスを維持するためには、接触を最小限に抑える老獪な守備への移行が求められます。
主な在籍クラブと獲得タイトル
- ニューウェルズ・オールドボーイズ(アルゼンチン)
- デフェンサ・イ・フスティシア(アルゼンチン)
- アヤックス(オランダ)
- マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)
家族と歩んだ物語
リサンドロ・マルティネスの不屈のメンタリティは、アルゼンチンのグアレグアイという小さな街で育った謙虚な生い立ちに根ざしています。彼の父、ラウル・マルティネス氏はかつてレンガ職人として働いており、13歳の時にサッカーか学業かの選択を迫られた際、父は彼を建設現場へと連れ出しました。朝7時から過酷な労働環境を経験させることで、「サッカー選手にならなければ、この生活が現実になる」と教えたのです。この原体験が彼に「サッカー以外の道はない」という強い自覚を与えました。また、彼は母シルヴィナ氏との絆が極めて強く、プロになって得た最初のお金で家族に家をプレゼントしたエピソードは有名です。「幼少期には食べ物や靴に困ることもあった」と語るリサンドロにとって、ピッチに立つことは家族の誇りを背負って戦うことと同義です。2025年の過酷な膝の負傷時にも、彼は家族や友人の支えを借りて絶望の淵から立ち上がりました。こうした家族への深い情愛が、小柄な彼が大男たちを相手に一歩も引かずに戦い続ける源泉となっています。
知られざるエピソード

ピッチでの狂犬のような姿とは裏腹に、私生活ではかなり冷静で思慮深い一面があるらしいよ。
一つ目は、2026年1月の現地メディア『AFA Estudio』のインタビューで明かされた、引退を考えた夜の話です。2025年に前十字靭帯(ACL)を損傷した際、あまりの痛みの激しさとリハビリの辛さに、「自分はもうサッカー選手ではないのではないか」という絶望に襲われ、本気で引退の二文字が頭をよぎったと吐露しています。しかし、その翌朝にジムへ向かった際、自身の名を冠した地元の小さなピッチで遊ぶ子供たちの映像を目にしたことで、「ここで止まるわけにはいかない」と闘志を再燃させたといいます。このエピソードは、彼の精神的な復活劇がいかに脆く、そして強固であったかを物語っています。
二つ目は、彼の独特な練習ルーティンです。彼は練習後、専属の心理学者とのカウンセリングを欠かさず行っており、試合中の怒りや情熱をどのように「論理的な守備」へと変換するかを常に学んでいます。また、彼は幼少期、ボールがないときには紙を丸めたものや布を丸めてボールを作り、いとこたちと木の枝をゴールポストに見立てた自作のピッチで日が暮れるまで遊んでいたといいます。この「何もないところから工夫してプレーする」という環境が、彼が小柄な体格で大男たちを翻弄するための、独自のステップや身体の使い方を育むことになりました。
まとめ
リサンドロ・マルティネスは、卓越した技術と不屈の精神力を備えた、現代フットボールにおける「最小の巨人」です。空中戦や度重なる怪我という弱点は存在するものの、それを補って余りあるビルドアップ能力とリーダーシップは、マンチェスター・ユナイテッドの戦術的な核となっています。絶望的な負傷から復活した彼が、30代を目前にしてどのように自身のスタイルを円熟させていくのか、そのキャリアの後半戦はスカウトたちの注目を集め続けています。


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